Hello cosmos,Goodbye chaos.

アニメーションが好きな摂食障害経験者(女性)による日々の雑感

遠い場所から焦がれる

夜になると高層ビルに灯る赤色灯に、もう何年も焦がれている。

 

初めて赤色灯に心惹かれたのは、高校生の時。
繁華街にある映画館で、夜の時間帯に初めて映画を見た帰り。
外に出ると、高層ビルの窓から放たれる人工的な光が真っ暗な夜空に放たれて、輝く夜景を作り出していた。
都会的な夜景に、肉眼で初めて触れる。
心が高揚する中、私は赤色灯を見つけてしまった。

 

ゆっくりとした速度で明滅を繰り返す赤色灯は、はしゃぐ周りの光からは一線を引き、何者にも囚われず佇む孤高の番人のように思えた。
凛とした美しさに心を奪われた私は、遠い場所にいる彼に焦がれ、近くに行って一緒に街を見下ろしたい、欲を言えば彼自身になってしまいたいとさえ思った。

 

その衝撃的な出会いから数年が経った頃、私は彼に最接近したことがある。
六本木ヒルズ屋上の展望台に上った時のこと。
何の前触れもなく、驚く程の近い距離で彼を目にした。
彼に近づきたいという願いが、期せずして、今この瞬間に叶ってしまった!
だけれども、私の心は波が引いていくように冷たい場所へと追いやられた。

 

私がどんなに近づいても、彼には私など見えていない。
私の存在などお構いなしに、彼は孤高に在り続ける。
それに、気付いてしまった。

 

近くにいるのに、相手との距離が縮まらない。
こんなにさびしいことはない。
でも、焦がれる気持ちは止められない。

 

どうしようもなく焦がれてしまう対象は、自分が傷つくことのないよう、遠い場所から見つめていたい。
勇気がないと言われても仕方がない。
これが、私のやり方なのだ。